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谷川俊太郎の詩のことを知ったのは、たぶん学生の頃だったと思う。
初めて読んだのは、「ぼくもういかなきゃなんない…」のフレーズで始まる『さようなら』という詩だった。その語り口調から思い浮かぶのは、せいぜい小学生くらいの幼い少年だ。そのくせ、「すぐいかなきゃなんない」、「ひとりでいかなきゃなんない」、「どこへいくのかわからないけど」、「どうしてなのかしらないけど」と、不思議に真摯な訴えをしているのが印象的だった。
この詩を教えてくれた人は大学の先輩だった。「どうしてこの詩が好きなんですか」と尋ねても、うまくはぐらかすばかりで答えてくれない。やっと聞き出せたのは、「ラストの数行がいい」という一言。なんだか童謡のフレーズのような詩を読んでいる先輩の心境は、結局「謎」のままだった。
けれど、改めてこの詩を読み返してみると、「読めば分かるだろ」と言わんばかりだったあのときの先輩の思いが、手に取るように分かるような気になってくる。中でも、ラスト近くの数行を読むと、「ぼく」が「まだ幼い少年」だという当初の印象がすっと薄らいで、これから先の生き方のことを、ふと思い描いてみている誰かの横顔が、谷川さんのポートレートと重なるように浮かんでくるような気さえする。
よるになったらほしをみる当時のわたしは、初めて実家を離れて、大学近くのマンションに住み始めたばかりだった。何かにつけて随分と背伸びをしていて、それだけ心の中は老け込んでしまっていたのかもしれない。もちろん「ぼく」の心境を、「自分のこと」として素直に受け止めることなんてできなかった。
ひるはいろんなひととはなしをする
そしてきっといちばんすきなものをみつける
みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる
だからとおくにいてもさびしくないよ
ぼくもういかなきゃなんない
(この記事は、別ブログ「掘れたて本」から転載したものです)
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