![]() | 暮らしの哲学―やったら楽しい101題 ロジェ=ポル ドロワ 鈴木 邑 Roger‐Pol Droit ソニーマガジンズ 2005-02 売り上げランキング : 150301 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
純粋に、気晴らしのために書かれた本というのがある。この『暮らしの哲学―やったら楽しい101題』もその一つ。
テーマは、「日常のなかの冒険」だ。歩く、水を飲む、バスを待つ、電話をかける、カフェに入る…。何でもないように思える動作や行動でも、「ちょっとしたきっかけをつくる」ことで、思いがけない驚きや発見の源になる、と著者のロジェ=ポル・ドロワさんは説明している。
もしも、どこへ行く当てもなく地下鉄に乗ったら…。真夜中にふっと目覚めたとき、そのまま家の中を歩いてみたら…。自分とは違う、別の人になりきってみたら…。冷たい水の中にいきなり潜ってみたら…。
こうした「ちょっとしたきっかけ」について、101通りのヒントを与えてくれているのがこの本だ。そうして、繰り返し勧められているのは、「かならず自分で実際にやってみる」ということ。
実践してみることによって「わかりきったこと」の実体が剥がれてくるのを実感してください。これは、哲学の歴史が始まって以来、つねに大切なことです。実際に位置をずらしてみる。横向きに歩いてみる。視点を変えてみる。はじめはごく小さな変化にすぎなくても、実際にやってみることによってひとつの事柄をまったく別の角度から見ることができるのです。
読んでいるだけでも十分に楽しめそうな内容だけれど、せっかくなので、自分でもできそうなものを探してみる。
たとえば、「寝ころんで星空を眺める」。じっと眺めているうちに、天と地がひっくりかえって、身体が高いところを漂っているような感覚が味わえる…という話は興味深いけれど、さすがに夏がくるのを待って試したほうがよさそうだ。
そこで、「同じ単語を繰り返す」というのをやってみる。身近にある物をひとつ手に取って、じっと見つめながら、その名前を繰り返し、くりかえし呼び続ける。そのうち、「物の名前から、意味が逃げ出す」ような感覚が味わえるというしかけ。
これは、効果てきめんだった。ちょっと長めの名前を選ぶと、成功率が高まるみたいだ。朝起きぬけで、まだアタマがぼうっとしている間だとさらにいい。この間も、「シナモンシュガー」と「鼻炎ソフトカプセル」で試してみたら上手くいった。
いっぽう、一読して心に残るものがあったのは、「人類を何かのまちがいと考える」というもの。期待できる効果は、「すがすがしくなる」。
私たちは、人類は特別な存在であるとさんざん聞かされてきました。世界の中心。神の子たち。進歩のベクトル。人類の存在が、神話や宗教によってたたえられるあまり、犯した失敗、品性の卑しさ、延々と終わらない戦争、数知れぬ恥辱のほうは顧みられなくなっています。
一度、私たちの存在意義を完全に無視してください。人類は創造主の失敗であり、生物学的な事故であると考えてみるのです。宇宙のはずれの、石ころのようにちっぽけな星で、無秩序に発展してきた人類。無分別に繁殖し、環境を破壊し、虐殺、飢饉、圧政を繰り返し、そうしていつか永久に滅びる存在。
正当化の余地のない、非常識ではかない存在を正面から見すえてください。人類には根本的に存在理由も将来もないというこの考えを、じっと我慢する訓練をしてください。そうすると心が穏やかになってきます。なぜなら、この無意味と恐怖があるからこそ、人類が生み出した崇高なものが、このうえなく貴重に思えてくるのです。完璧な音楽、忘れられない絵画、大聖堂の栄光、詩人の涙、恋人たちの笑い声…。これらはいずれも人類という誤りから生まれたものです。そして、そのどれもがすばらしい驚きの源なのです。
「客観的に見れば、なんてことはない平凡な自分」に、改めて向き合うのは厳しいことだ。それを、わざわざ地球規模で体験してみようという、スケールの大きい想像力。そうして、その先に見えてくる、気晴らしにしてはあまりに壮大すぎる救いのイメージ…。
個人的には、この方法がけっこうマッチして、思わず胸がじんとしてしまったことを告白しておく。哲学って結構おもしろいかも、と思わせてくれる不思議な味わいの一冊。
タグ:ロジェ=ポル ドロワ 気晴らし





101通りもヒントがあるんですね。
それだけあれば、自分にぴったりするものがあるかもしれません。
気晴らし本!好きですね。
ちょっとした、待ち時間などにはもってこいです。
この中で書かれているうちでは、「寝転んで星空をながめる」
が一番やってみたい。
夜中に目を覚ました時、家の中を歩くって言うのは、家族が心配しそうなのでやめておきます。(笑)
「寝転んで星空をながめる」って、良さそうですよね。
実は、小さい頃に、家族で同じようなことをやったような
記憶があります。
車庫の前の、コンクリート敷きの所に毛布をしいて、
みんなでコロンと寝転んで、天の川を見上げていました。
「発見」というほどのことは何にもありませんでしたが、
夕涼みにもなって、何だか楽しいひと時だったような気がします。
夜中に家を歩くのは、確かにちょっと勘違いを誘うかもしれません。
うかつに試さないでよかったです(笑)
こちらに、遊びに参りました。
ところで、この本の何通り試してみましたか?
ご訪問ありがとうございます。
>ところで、この本の何通り試してみましたか?
実は、ここに書いている分だけです(笑)
著者のドロワさん自身、この101例の全部を
実践してはいないんじゃないか、と思ったりもしましたが…
(中には「人前でサンタクロースをほめたたえる」
とかもありましたし…)
本当のところ、どうなんだろう?
なんて考えると面白い本です。
コメント/TBありがとうございます。
この本、ほんと「暇つぶし」には最高ですよね。
魅力的な項目がいくつかありますが、私は「光の中の塵を見つめる」にじーんときました。子供の頃、こうして時間を過ごすのが大好きだったんです。
大人になると「さあやるぞ」と思い立たないとできないことかもしれませんが、子供の頃には日常の行動だったなあ…というものがいくつかありますよね。
「童心を思い出せる」という意味でも素敵な本だと思います。
コメントとTBをありがとうございました。
「光の中の塵を観察する」、そういえば、私も子供のころに
試した覚えがあります。
子供はあれを見て、「あ、ハウスダスト」とは
思わないんですよね。
不思議と穏やかで、おごそかといっていいような
気分になったのを覚えています。
もうずいぶんと見ていない光景のような気がしますが…
「童心を思い出せる」、その通りですね。