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以前、電車の中でかわいいベビーを見かけたことがある。隣に乗り合わせたおばさんがよろこんで、しきりに「いないいないばあ」で遊んでやったりしていた。
けれど、本人はずっとむっつりした表情のままで、あんまり反応がよろしくなかった。
「ベビーの中にも、あんなダウナー系がいるんだな」と、ちょっと意外に思ったのを覚えている。
ところが、この畑正憲さんの本を読んで、あのときの真相が分かったのだ。
あるとき、オーストラリアを旅行していた畑さんは、死んだワラビーの母親を発見した。お腹の袋には生まれたての子供がいたので、さっそく母親代わりになって育ててやったそうだ。ところが、そのワラビーベビーは、育ての親にまったく懐かなくて、温かい布の袋に潜り込みたがってばかりいた。
そうか。秘密は脳の中にある!つまり、ワラビーやカンガルーの袋の中にいる赤ちゃんは、人間で言えばまだ「胎児」の状態で、外界に対する関心が芽生える前の段階なんだそうだ。なるほどなあ。
私は、そう考えた。
有袋類の袋は、子宮にあたるのではないだろうか。その中にいる間は、母親など認識しないでいいのである。
もちろん、人間の赤ちゃんも動物と同じで、発達にははっきりした段階があるらしい。だから、一頃はやった「胎教」なんて全く無意味だ、胎児はバッハやモーツァルトなんて必要としていない、というのが畑さんの考えだ。
きっと、あのとき電車で見かけたベビーも、別に人嫌いな性格だったわけじゃないんだろう。まだ「いないいないばあ」のおもしろさが分かる前の段階だったんだろうな。
こんなふうに、動物を通して考える「人間論」の本。なかなか楽しめる。
★今回の関連ページです。
「ムツゴロウさんこと畑正憲さんを東京ムツゴロウ動物王国に訪ねて」〜千葉のFMラジオ番組「ザ・フリントストーン」ゲストトークのページより
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